エンジニアに資格は必要ないという話がありますが、実は私はそうは思いません。
その理由として、主に以下の3点があげられます。
- 一定レベルのまとまった知識を得るためには、資格は有効な手段である。
- 就活・転職時に有利に働くだけでなく、派遣先との面談時に評価の指標となる。
- 技術に関して積極的に学ぼうと努力する姿勢や、関心がある事の証明になってくれる。
もちろん技術力と経験がすでに豊富にあってポートフォリオで証明できる場合や、エンジニア職に就いていて特に困っていないという方でしたら不要かもしれません。
ですが、これから未経験で転職したいという方や、エンジニアに興味があるんだけど何から学んだらいいか分からないという方には、資格取得というのはある種の特効薬になりえます。
私自身も未経験からエンジニアに転職し、1年目が終わるまでに7個の資格を取得しました!
そこで、今回はどんな資格を取得したのかについてお話したいと思います。
取得した7個の資格
取得時期と学習期間をざっくり表にまとめると、以下のようになります。
時期 | 資格名 | 学習期間 | 説明 |
2022/10 | 基本情報技術者 | 3か月 | IPAによる国家資格。CBT方式。IT職なら知っておきたい知識を学べる。 |
2023/04 | CCNA | 1か月 | Cisco社によるベンダ資格。ネットワークの基礎を学べる |
2023/07 | LinuC-101 | 1か月 | Linuxの基礎を学べる。 |
2023/08 | LinuC-102 | 1か月 | Linuxの基礎を学べる。LinuC-101試験と合わせてレベル1認定となる |
2023/11 | AWS CP | 1か月 | AWS認定資格。クラウドサービスの基礎的な知識を学べる。 |
2023/12 | AWS SAA | 1か月 | AWS認定資格。CPに比べてより深い知識が求められる。 |
2023/12 | 応用情報技術者 | 2か月 | IPAによる国家資格。基本情報より深い知識が求められる。 午後試験が記述式となっている。 |
私がエンジニアとして現在の企業に入社したのが、2023年4月になります。
基本情報だけは転職時の武器として活用するため入社前に取得し、そこから一年でさらに6個取得していきました。
7個取るのって結構大変だったんじゃないですか?
仕事と勉強の両立がそれなりに大変でした。学習時間は平日2-3時間、休日は6時間程度でしょうか。多い日にはもっと勉強していたと思います。
もちろん、私の取得したすべての資格を取る必要は全くないです。
自分にとって必要だと感じる資格だけ学んでいただければ十分だと思います。
それでは早速、個別に紹介していきたいと思います!
国家資格
ITエンジニア向けの国家資格は経済産業省認定の資格であり、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が主催となって行われています。
通年で行われるものから、春期・秋季に分けて開催されるものがあり、その種類も多岐にわたっています。
私自身は取得していませんが、ITパスポートなどは聞いたことがある方も多いかもしれませんね。
基本情報技術者試験
ITエンジニアの登竜門とも呼ぶべき存在の資格になります。
IPA定義のレベル2(基本的知識・スキルを有し,一定程度の難易度又は要求された作業について,そ
の一部を独力で遂行できる)に該当します。
開催時期 | 通年で随時開催(2024年5月現在) |
方式 | CBT方式(Computer Based Testing = パソコンで受験) |
受験料 | 7,500円(税込) |
出題数 | 科目A: 60問/90分 科目B: 20問/100分 |
対象者像 | ITを活用したサービス、製品、システム及びソフトウェアを作る人材に 必要な基本的知識・技能をもち、実践的な活用能力を身に付けた者 |
学習期間 | 3か月程度、全くの初学者なら半年ほど。 |
IT職に就くのであれば、知っておきたい知識が一通り入っています。
また、ベンダ資格には基本見られないような、マネジメント分野およびストラテジ分野についても学べるのは大きな特徴だと思います。
私も最初に基本情報技術者試験に合格しました。
基礎的なITの知識が頭に入るので、本当に受けて良かったと思っています。
近年改訂されて通年で受験できるので、入門としては一番おすすめの資格です。
ただし、科目Bでは多くの人が苦しめられるであろうアルゴリズムとプログラミング分野が入ってくるので、相当時間の勉強は必要になってきます。
私自身は改訂前の試験で合格しましたが、学習に3か月ほどかかりました。
応用情報技術者試験
基本情報技術者試験に合格したら次はこれを受けましょう。
IPA定義のレベル3(応用的知識・スキルを有し,要求された作業について全て独力で遂行できる)に該当します。
ちなみにですが、この試験より上は高度情報技術者試験と呼ばれ、各分野ごとに試験が分かれるようになります。
これらはレベル4に該当する比較的難しい試験なので、未経験から受ける必要は正直全くないです。実務に出てからしばらく経った後に必要に応じて取得していけば良いでしょう。
開催時期 | 春期(4月)・秋季(10月)の年2回 |
方式 | PBT方式(Paper Based Testing = 紙に書く) 午前問題:四肢択一式、午後試験:記述式 |
受験料 | 7,500円(税込) |
出題数 | 午前: 80問/150分 午後: 5問(11問から選択、セキュリティ分野は必須)/150分 |
対象者像 | IT を活用したサービス,製品,システム及びソフトウェアを作る人材に必要な応用的 知識・技能をもち,高度 IT 人材としての方向性を確立した者 |
学習期間 | 3か月程度。基本情報取得者なら2か月程度。 |
分野は基本情報とほぼほぼ変わりませんが、一歩踏み込んだ知識が問われます。
また、PBT方式となり午後試験では記述式の問題が出題されます。そのため、単に知識を得るだけでなく適切な日本語で答えをまとめあげる学習が必要になります。
その反面、実は基本情報に比べて受かりやすいと言われる点があります。
それは、アルゴリズムやプログラミング分野が午後試験で必須問題となっていないという点です。
セキュリティ分野は回答必須ですが、その他をマネジメント・ストラテジ分野に絞れば文系的な国語力で突破できる可能性があります。
とはいえ決して簡単な試験ではないので、しっかり学習しましょうね!
ベンダ資格
ここからは民間系の資格に入っていきます。
まずはベンダ資格です。これはハードウェアやソフトウェア製品を取り扱うベンダが主催するもので、特定の製品に対する知識や技能を証明してくれるものになります。
特定の製品と言いましたが、各ベンダが得意とする分野(ネットワークとかクラウドとか)に対する一般的な知識・技能を有することの証明にも十分なり得ます。
ビジネス的側面がかなり強いので、基本的に受験料が高いです笑
また、ライセンスの定期的更新のために再受験しないといけないものも多いのが特徴です。これも一種のビジネスですね。
CCNA(Cisco Certified Network Associate)
Cisco Systems社が主催となって行われる試験です。
聞き馴染みのない方もいらっしゃるかもしれませんが、ネットワーク機器において世界1位の圧倒的シェア率を誇る、とんでもなく大きな企業です。
インフラエンジニア、特にネットワーク系の仕事に就くならまず間違いなく持っておきたい資格No.1です。
開催時期 | 通年で随時開催 |
方式 | CBT方式 多肢択一式を初めとして複数形式あり。 コマンドを実際に打ち込むシミュレーション問題も存在する。 |
受験料 | 42,900円(税込)※変動あり |
出題数 | 100問前後/120分 |
学習期間 | 3か月程度 |
はい、受験料がべらぼうに高いです。しかも近年徐々に値上がりしてます笑
また、問題数も不定期に変わるため予測がつかないです。あくまで目安としてください。
Cisco独自の技術はもちろんのこと、ネットワーク一般に関する知識を深く学ぶことができます。
IPアドレス、OSI参照モデル、ルーティング、VLAN、リンクアグリゲーション、無線LAN、etc…
挙げたらキリがありませんが、取得できればネットワークについて一定レベルの知識を有することの証明になりますので、学習する意義はとても大きいと思います。
もちろん簡単ではないですし、生半可な知識ではシミュレーション問題に太刀打ちできません。
イメージをつけるためにも、学習時には無料で使用できるCiscoパケットトレーサーを用いて、実際にCLIでコマンドを打つ練習をしてみるのがおすすめです。
CCNAについては、こちらの記事がより詳しいので参考にしてください。
また、CCNAについては独学だけでなく、スクールで学ぶことができます。
実は私も、CCNAはスクール講師の方から教わりました。
ネットワークは理解しづらい箇所が多くある上に学習量が多いので、独学だと挫折しかねません。その点、授業があって質問もできるスクールは大変助かりました。
さらに意外と知られていないこととして、2024年現在であれば「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業(経済産業省)」による補助金制度があるため、普段よりもスクールに通いやすくなっています。
つまりは、金銭的な負担を大きく減らしつつもスクールで学ぶことができるようになりました。
スクールによって最大100%のキャッシュバックもあるため、この機会にスクールを利用して最短で学びきるのがおすすめです。
無料カウンセリングも行われているので、一度参加してみましょう。
AWS(Amazon Web Services)
皆さんご存じ、Amazonが主催の資格となります。
AWS固有のサービスを初めとして、クラウドサービスの仕組みや知識を一通り学ぶことができます。
クラウドサービスってなんですか?あまりイメージがつかないのですが…
総務省の用語集では、以下のように説明されています。
クラウドサービスは、クラウドコンピューティングの形態で提供されるサービスです。従来は、利用者側がコンピュータのハードウェア、ソフトウェア、データなどを、自身で保有・管理し利用していました。クラウドサービスでは、利用者側が最低限の環境(パーソナルコンピュータや携帯情報端末などのクライアント、その上で動くWebブラウザ、インターネット接続環境など)を用意することで、さまざまなサービスを利用できるようになります。クラウドサービスは、主にSaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)の3つの形態で提供されています。
ざっくりインターネット経由で利用できるサービス全般のことを指すという理解で大丈夫です。
X(旧Twitter), Facebook, Gmail, iCloud, Notionなどはクラウドサービスの代表例です!
踏み込むとサーバの仮想化技術などが出てきます。興味があれば勉強してみましょう。
クラウドの説明はここらへんにして、AWS資格について見ていきます。
AWS CP(Cloud Practitioner)
AWSの基礎について一通り広く学べます。クラウドの利点についての理解も深まるのでおすすめです。
開催時期 | 通年で随時開催 |
方式 | CBT方式 多肢択一式 |
受験料 | 15,000円 |
出題数 | 65問/90分 |
学習期間 | 1か月程度 |
AWSについて学びたいのであれば、ここから入るのが一番良いと思います。
AWS Well-Architected フレームワークと呼ばれる、アーキテクチャにおけるベストプラクティスとその柱となる思想は、AWSに限らずクラウドサービスの手本となるような考え方が多いため、非常に大切です。
AWS SAA(Solutions Architect Associate)
次にアソシエイトと呼ばれる、少し難易度の高い試験を紹介します。
開催時期 | 通年で随時開催 |
方式 | CBT方式 多肢択一式 |
受験料 | 20,000円 |
出題数 | 65問/130分 |
学習期間 | 1か月程度 |
問題数がCPと変わらないのにも関わらず制限時間が伸びていることから分かるように、一題あたりの問題文量と問われる知識量が大きく異なってきます。
EC2, VPC, S3, Lambda, RDS, DynamoDB, Aurora, などなど本当にたくさんあるサービスについて、その利点やある条件下における最適なサービスは何かが問われることが多いです。
実際にAWSアカウントを作成し、無料枠の中で手を動かして触ってみるのがおすすめです。
ベンダニュートラル資格
その名の通り、各ベンダに依存しないより普遍的な技術を学べる資格になります。
LinuC
LPI-Japan(NPO = 特定非営利活動法人)が主催の資格になります。
エンジニアであれば一度は必ず触れるであろうLinux OSについて学ぶことのできるため、エンジニアであればほぼ全員にとって有用といっても過言ではありません。
LPI-Japanの公式サイトによると、LinuCについて以下のように説明されています。
「クラウド/DX時代のITエンジニアに求められるシステム構築から運用管理に必要なスキルを証明できる技術者認定」
その言葉通り、単にLinuxを触れるようになるだけでなく、仮想化やコンテナ技術についても学ぶことができるため、クラウドに関する理解もより深まる事でしょう。
LinuCにはレベルが存在するのですが、例えばレベル1認定を受けるためには101試験と102試験の2試験に合格する必要があります。
以下の表は101/102それぞれの試験について当てはまると思ってください。
開催時期 | 通年で随時開催 |
方式 | CBT方式 多肢択一式、一部キーボード入力でコマンドを答えるような問題あり |
受験料 | 16,500円(税込) |
出題数 | 60問/90分 |
学習期間 | 1か月程度 |
こちらもコマンドを知らないと合格は難しいですが、実務でLinuxを触っていない限りイメージが湧きづらいと思います。
ぜひとも早い段階からプロンプトの挙動やコマンドラインインターフェース(CLI)に慣れておきましょう。
自宅のPCに仮想マシンを立てるなどしてLinuxを触れる環境を構築しておくのがおすすめです。その経験は今後も必ず役に立ちます。
最近はWSL2など、Windowでも手軽にLinux環境を構築できる方法があるので、試してみてください。
ISOイメージから仮想マシンを立ち上げたいならVirtual BOXなどがおすすめです。私は最初、こちらの方法でCentOS/Ubuntu環境の両方を構築しました。
どんな資格試験もそうですが、ただ暗記に走るのは避けるべきです。
エンジニアであれば、決して資格のためだけに勉強すべきではないです!
実務に少しでも生かせるよう、色んな技術に実際に触れてみることを意識して学習してみください。その方が楽しいし記憶にも残るので一石二鳥ですよ!
まとめ
ここまで、一通り私が取得した7個の資格について見ていきました。
何度も繰り返しますが、すべて真似して取るような必要は全くないです。
時間は有限なので、ぜひとも自分に合ったものだけ学習するようにしてください。
あえてお伝えするなら、エンジニアを目指す方がITパスポートを取る必要は全くないと思います。
もう少しだけ背伸びして、基本情報技術者試験から取得してみて欲しいです。
私がそうだったように、初学者の方でも勉強すれば十分受かります。
また、実環境を構築できるところは出来る限り手を動かして学んでいきましょう。
それがあなたのエンジニアとしての実力を上げてくれると断言できます。
あらためて、ここまで読んでくださりありがとうございました!
近いうちに、個別の資格に関する記事も出そうと思っているので楽しみにしていてください!
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